吸着入れ歯の仕組み
吸着入れ歯の基本的な仕組みについて説明いたします。
吸着入れ歯は吸盤効果で歯ぐきに引っ付きます。
歯が数本だけなくなったときに使用する部分入れ歯は、残っている歯に金具をひっかけて固定する方式です。これは簡単に想像できると思います。しかし、歯がなくなってしまった時に使用する総入れ歯の場合、歯に固定することが出来ないため、単純に考えるとお口の中で動いてしまい、歯として機能できません。
当院の吸着入れ歯は、総入れ歯でも歯ぐきに引っ付ける仕組みを持っております。具体的には、入れ歯の内面を粘膜にぴたりと密着させることで、内面に空気が入らないようにし、吸盤が引っ付くのと同じ仕組みで入れ歯が歯ぐきに引っ付きます。
入れ歯を不安定にする要素について。
総入れ歯の内面が歯ぐきにぴったり合っていれば、吸盤の効果が出るかというと、そんな簡単な話ではありません。お口は絶えず動いています。お食事をしたり、会話をするためにお口の周りの粘膜や筋肉が動き、入れ歯を外す方向に力を加えてしまいます。それでは、入れ歯が大きいと粘膜や筋肉の動く部分に当たるので、動く部分を全て避けて小さくすればよいと思われるかもしれません。しかし、入れ歯が小さすぎるとそもそも吸着の効果が得られません。
また、上下の入れ歯のかみ合わせるときにかかる力も不適切であれば入れ歯を外すように働きます。例えば、左ばかり強く歯が当たる総入れ歯の場合、左で噛んだ時に右側があまり当たっていないため、てこの原理で右側が浮いてしまいます。また、ものを噛むときの顎の動きは、単純に垂直に動くだけでなく、ものをすりつぶすための横方向にも力をかけるため、様々な状況でのかみ合わせの力が入れ歯を外さないように調整しなければいけません。
入れ歯を安定させるためには、入れ歯を大きすぎず、小さすぎない適切な形を設計し、かみ合わせを前後左右均等にする必要があります。
入れ歯を吸着させるための仕組みについて。
前に説明しましたように、入れ歯を吸着させるためには、適切な形とかみ合わせが大切です。適切な形を調べるために、機能印象法・動的印象法という型取り法を行い、かみ合わせを適切にするためにゴシックアーチ描記法という検査を当院では行います。
機能印象法
お口を動かしたときの粘膜や筋肉の動きが入れ歯を離脱させる力をかけるので、型と取るときに実際にお口を色々と動かしていただき、その時の患者さんの粘膜と筋肉の動きを記録します。
動的印象法
機能印象法は歯科医院での型取り法であり、短時間で患者さんの日常行うであろうお口の動きを模擬的に再現して型取りを行います。この方法でも、十分な吸着力を得られることがありますが、やはり人間には個人差があり、上手くいかないことがあります。その原因のひとつに、歯科医院での模擬的なお口の運動と日常生活でのお口の動きに大きな違いがある場合です。その場合、長時間硬化しない特殊な型取り材を入れ歯の内面に張り付けて、日常生活でのお口の動きを記録していきます。
ゴシックアーチ描記法
上下の顎の位置関係と下顎の動きを検査する方法です。上下の顎に板と針を噛ませる特殊な装置を装着し、かみ合わせの高さ・前後左右の位置を0.1mm単位で検査して適切なかみ合わせを決定します。