部分入れ歯の違和感を可能な限り少なくするように設計いたします。
入れ歯の違和感について誰かに相談すると、「入れ歯は違和感のあるものだから、それは仕方ない。慣れるしかない。」と言われてしまうことが多いようです。確かに、ご自身の歯を生やすわけではないので、違和感ゼロは難しいかもしれません。しかし、違和感を極力少なくすることは可能ですし、当院ではそのための努力を行っております。メガネやコンタクトレンズなどと同じように、普段は意識していないレベルを目指していきます。部分入れ歯は、総入れ歯と比べると小さな入れ歯ですが、 構造が複雑になるため、特有の違和感の出方があります。
当院では、可能な限り、入れ歯の違和感を減らすように設計・調整を行っていきます。
上の部分入れ歯の形
部分入れ歯は、歯のない場所によって、設計が変わってきます。まさにオーダーメイドなのですが、同じ人であっても、設計に対する考え方により、入れ歯の形は様々です。
基本的には、歯のない所にピンク色の義歯床があり、その上に人工歯が植えられます。その義歯床同士を連結(上顎はパラタルバー)することで、一つの入れ歯とします。残っている歯には、クラスプと呼ばれる金具を設置し、入れ歯をお口に固定します。
下の部分入れ歯の形
基本的には上の部分入れ歯と同じですが、上顎と違って舌があるため、舌の動きを邪魔しないようにパラタルバーではなくリンガルバーという装置で義歯床同士を連結します。写真で比べると、大分形が違うのがわかると思います。
入れ歯の違和感の原因について。
患者さんのお口の中の感覚は様々で、個人差がとても大きいです。入れ歯の違和感に関しては、傷が出来るわけではないため、客観的に調べることが難しいことが多く、解決方法も様々で治療の難易度が非常に高いです。歯科医師や歯科技工士の知識や経験を元に、考えられる原因を順番に解決していく必要があります。
そのために、当院ではいきなり最終の入れ歯を作ることはせず、治療用の入れ歯で違和感の原因を探して解決してから、最終の入れ歯を作っていきます。
入れ歯がゆるい・動く。
部分入れ歯は、歯に金具を引っかけて入れ歯をお口に固定しますが、設計が不適切だったり、金具が緩んでくると入れ歯がすぐ外れたり、動いて違和感につながります。設計を見直したり、金具を調整することで改善する可能性があります。
部分入れ歯の上あごの金属の棒(パラタルバー)が気になる。
上の部分入れ歯には、パラタルバーと呼ばれる左右の入れ歯の装置を連結するパーツが必要なことがあります。パラタルバーの設定位置は、上顎の奥の方にするか、手前の方にするか色々と設計の仕方があります。上あごの奥の方が敏感な場合、手前の方が敏感な場合など、患者さんそれぞれで個人差が大きいです。パラタルバーが奥の方にある場合、そのことで違和感が出る場合があります。その場合、パラタルバーの位置を変更することで違和感を減らせる可能性があります。
また、パラタルバーにも色々あり、細くて分厚いもの、薄くて幅広のものなど、様々な設計を行うことが出来ます。設計を工夫することで、ほとんどの場合は違和感を軽減できます。
パラタルバーで違和感が出るなら、左右の入れ歯を別の装置にしてパラタルバーをなくせばいいという発想をされる歯科医師もいると聞きますが、そういった必要なものをなくすといったことをすると、別の問題が発生して、結局安定しないことが多いです。歯科の入れ歯の教科書にもそんなこと書いてあるものは見たことがありません。当院では、パラタルバーが必要なケースなのに、省略して左右別の入れ歯にしたことは1回もありません。
上の部分入れ歯の手前の方が舌に当たって気になる。
前の項目と似ていますが、パラタルバーや入れ歯の装置が前歯付近にあると、舌が当たって気になる場合があります。設計により、位置を後ろへ変更できれば変更します。もし、前歯に入れ歯が必要な場合は、パラタルバーや入れ歯を極力薄くなるように設計したり、場合によっては、かみ合わせの高さが低すぎることで、舌のスペースが少ないことがありますので、かみ合わせの高さを調整することもあります。
部分入れ歯の舌の裏の金属の棒(リンガルバー)が気になる。
下の部分入れ歯には、リンガルバーと呼ばれる左右の入れ歯の装置を連結するパーツが必要なことがあります。リンガルバーの設定位置は、深い所に入れるか、歯の付け根あたりにはわすかなど、色々と設計の仕方があります。もちろん、人により個人差が大きいですが、舌の動きを邪魔しない範囲で、舌の裏側に隠してしまうと違和感が減りやすい傾向があります。設計により、違和感を軽減出来る可能性が高いです。どちらかと言えば、上あごのパラタルバーよりは問題になりにくいと思います。
入れ歯のふちが長く・分厚く、圧迫感がある。
入れ歯のパーツがお口の中の敏感な場所に触れることで、圧迫感などの違和感につながることがあります。可能であれば、入れ歯のパーツを短くしたり、薄くすることで違和感を軽減します。違和感軽減のために、金具(クラスプ)の設置する歯を変えたりなど、設計自体を大胆に変更することもあります。
入れ歯の段差が舌で触ると気になる。
入れ歯の厚みを全くなしにすることは出来ませんが、入れ歯のパーツを薄くしたり、パーツと歯ぐきの境界を移行的に滑らかな形にすることで、舌で触ったときの違和感を軽減できることがあります。そのためには、お口の型取り自体を精密に行ったり、入れ歯の製作工程も精密に行って精度を高める必要があります。精度の低い入れ歯は、段差だらけで違和感が出やすいです。
食後にものが溜まる。
部分入れ歯の金具(クラスプ)の特性上、その周囲にものが溜まりやすいのは仕方ないこともありますが、可能な限り軽減していきます。歯ぐきとの適合性が悪い場合は精度を上げて適合させれば解決することが多いです。リンガルバーや舌側の義歯床の形により溜まることもあるので、そのあたりの設計を変更することもあります。クラスプ周辺に溜まる場合が一番改善しづらいですが、歯の形態を修正(リカンタリングといいます。)して、義歯床との適合性を上げたり、クラスプ自体の種類を変えたりすることで改善する可能性があります。
発音しにくい。
発音時、お口の中の筋肉を複雑に動かしたり、舌を歯や歯ぐきに当てたりなど無意識に行っていますが、入れ歯がその運動の邪魔になっているときは、発音しにくくなります。実際に、舌の動きと入れ歯の関係性を調べながら、調整していきます。 特に部分入れ歯の場合は、パラタルバーの設計やリンガルバーの設計により、総入れ歯より改善しやすいことが多いです。
お口の中のスペースが狭く感じる。(総入れ歯と同様)
お口の中のスペースに一番関係あるのは、上下の顎の位置関係です。顎の位置関係が近い(かみ合わせが低すぎる)と、お口の中のスペースは減ってしまい、違和感につながります。また、入れ歯の人工の歯の並び方のアーチが狭い(内側に並びすぎる)とき、入れ歯が分厚いときにも同様な違和感につながることがあります。入れ歯の状態を確認し、かみ合わせや人工の歯の並び、入れ歯の厚みを調整しながら、違和感を軽減していきます。
舌が動かしづらい。(総入れ歯と同様)
お口の中のスペースが狭いときや、入れ歯のふちが舌の動きに合っていないときに舌が動かしづらくなります。 お口の中のスペースが狭いときの調整に加え、舌を動きを型取り材で記録して、入れ歯に取り入れて違和感の軽減をはかります。
ものをほおばった感じがする。(総入れ歯と同様)
お口の中のスペースが狭く感じられるときとは逆に、顎の位置関係が遠い(かみ合わせが高すぎる)と、適正な位置までお口を閉じられず、ものをほおばったような違和感につながります。かみ合わせの高さを下げる方向で調整すれば軽減する可能性があります。
唇が閉じにくい。(総入れ歯と同様)
かみ合わせが高すぎる場合や、入れ歯の前歯が出っ歯の位置に並べられていると、唇が閉じづらいことがあります。かみ合わせの高さの調整や、入れ歯の前歯の並び方を調整することで改善する可能性がいあります。