インプラント周囲炎とは。
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りで炎症を起こしている状態です。インプラントは、チタンなどで出来たネジを骨に入れる治療法ですが、インプラントと骨が接触している部分に炎症が起こってしまうことがあります。
原因は歯周病と同じで、インプラントの周りに細菌が感染して炎症を起こし、、インプラントを支える骨が壊されてしまいます。インプラントの成功率について、様々なデータがありますが、日本国内においては、インプラント処置後3年以内に3割程度がインプラント周囲炎を起こすと日本臨床歯周病学会のデータがあります。
インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎は、歯周病のインプラント版のようなものですが、インプラント体の周りに細菌が感染し、インプラントの周りの歯ぐきが溶かされていく病気です。インプラント体は、歯と違って人体に取って異物なので、そもそもが炎症を起こしやすく、当然歯より弱いです。
また、インプラント体の表面は、ざらざらしている方が骨とは引っ付きやすいのですが、ざらざらしている方が細菌感染を起こしやすくなってしまい、感染すると表面から細菌を除去しづらくなってしまいます。という難しい状況です。現行のインプラント体は、骨との結合を優先してざらざらしているものが多いので、一旦細菌感染を起こすとフォローが難しいです。
症状
- 歯ぐきから血が出る。
- 歯ぐきが腫れる。
- 歯ぐきから臭いがする。
- 歯ぐきからうみが出る。
- 歯ぐきが下がってインプラントのネジが見えてきた。
- 噛むと痛い。
- 何もしなくても痛い。
- インプラントがグラグラする。
インプラント周囲炎によるインプラント体の脱落
左の写真は、インプラント周囲炎によりインプラント体がぐらぐらになり、当院で撤去したものです。
インプラントのネジの部分が細菌感染により汚染され、表面が歯石によりざらざらになり、変色しています。
インプラントが永久に持つということはありえません。
治療法
インプラント周囲炎の治療法は、外科処置による細菌感染の除去またはインプラントの除去になります。インプラント周囲炎の治療法は、未だ確立されておりません。予防法も確立されていません。
インプラント生存率のからくり
インプラント・ブリッジ・入れ歯の10年後の生存率はそれぞれ95%・95%・60%程度で、インプラントの生存率は他の知慮法と比べても優位があり、お勧めできるという表現が良く見られます。
この表現には、からくりがあって、生存率は成功率ではないということです。生存というのは、生き残っているという意味で、インプラントやブリッジ・入れ歯がセットしてからお口の中にあるというという意味です。お口の中にあれば良いので、例えば、インプラント周囲炎を起こして歯ぐきが腫れていたとしても、お口の中にあればOKというとても甘い基準なのです。
入れ歯への不遇
このデータを見ると、入れ歯の生存率が非常に低く見えます。このからくりを説明すると、インプラントとブリッジと違って、入れ歯は着脱できるというところです。着脱できるため、紛失されるリスクがあり、生存率という意味でまず不利です。
また、インプラントやブリッジは硬い金属やセラミックがメインの素材ですが、入れ歯のメインはハイブリッドセラミックやプラスチックがメインの素材です。装置自体も繊細であるため、他の治療法より入れ歯は破損のリスクが高く、生存率には不利になります。
ただし、入れ歯の紛失・破損については、残っている歯や骨への影響があるわけではないので、単純に入れ歯を作り直したり、修理すれば解決する問題です。インプラント周囲炎を治すことは困難で、ブリッジの歯がむし歯でやられてしまうと対処不能です。そもそも、この3つの治療法を生存率で比較するということ自体が難しいと私は思います。
論文の作者は、インプラント推しで、入れ歯が嫌いなんでしょう。
インプラント周囲炎は医原病
インプラント周囲炎は、歯科医師が患者さんにインプラント埋入処置をしなければ絶対になりません。インプラント周囲炎は、歯科医師の処置のせいで起こる医原病と言えます。もし、インプラント周囲炎の治療法が確立されていればまだよいですが、治療法が確立されておらず、基本的にはインプラント周囲炎になったら治すことが出来ないというのが現実です。
我々歯科医師は、このことをもっと重大に受け止める必要があると考えています。
患者さんの立場でも、安易にインプラント処置を受けようと考えず、インプラント処置によるリスクをしっかり理解した上で処置をされるか、インプラント処置自体を受けないという選択をするか、慎重に考えられた方が良いと思います。