インプラントの質はどこでも一緒ではありません。
当院では、まだ治療技術が未発達で臨床で利用するにはリスクが高いと判断しているため、インプラント治療を行っていません。しかし、ほとんどの歯科医院ではインプラント治療を行っています。インプラント治療の質の差について、説明していきます。
インプラントの質について、説明いたします。
当院では、まだ治療技術が未発達で臨床で利用するにはリスクが高いと判断しているため、インプラント治療を行っていません。しかし、ほとんどの歯科医院ではインプラント治療を行っています。インプラント治療の質の差について、説明していきます。
インプラントは外科処置でかつ、かみ合わせを作り出す複雑な処置です。
インプラントはネジのパーツを骨に入れ込んで固定します。その際に、歯ぐきを開いて、骨にドリルで穴をあけて、ネジを入れます。手術なので、当然、歯科医師の外科手技の技術力が成功に大きく関わります。例えば、近い手術として歯周外科と呼ばれる歯周病関連の手術がありますが、こういった手術を日頃から行った上でインプラント手術に精通している歯科医師がどれくらいいるかということです。歯周外科を行っている歯科医院は、実際あまりない(体感ですが、恐らく、1~2割程度の歯科医師しか日常的にやっていないと思います。Webサイトなどでその記述があるかなどでもわかります。当院では、もちろん日常的に沢山行っている手術です。)のが現実です。歯科として一般的な歯周外科も出来ないのに、より高度なインプラント手術を出来る技術が身に着けられるのでしょうか。
また、人体に異物を入れて定着させるという意味では、例えば、人工股関節を入れる手術などあります。こういった処置で大事なのが、異物を感染させると手術の失敗となるので、歯ぐきの切り方や骨の削り方などの基本的な手技のうまさもありますが、感染制御がきっちりできているかという点も非常に重要になってきます。感染制御という意味では、使用する器具を適切に滅菌できているかということを考えてないといけませんが、そのために必要なクラスBオートクレーブ(滅菌器)を設置し、適切に使用できている歯科医院がどれほどあるかという問題も出てきます。残念ながら、日本でのインプラント処置でのインプラント周囲炎を起こす確率は、世界的に標準的なインプラント治療より優位に高く、要するに成功率が低いという状況ですが、こういった手技的な問題もあると思います。
骨の形により、インプラントの入れられる場所はある程度限定されますが、その入れられる角度がかみ合わせを作る上でベストの位置ではないという場合があります。そういった場合、様々なことを考慮して、インプラントの外科的な観点と、かみ合わせの観点ですり合わせをして行く必要があります。しかし、これは全く簡単なことではありません。
入れたインプラントの本数が多ければ上手ということにはなりません。雑に大量に数をこなしたり、歯を残す治療をすぐに諦めてすぐに抜歯しているから本数が多いだけかもしれません。 チェーン店のファミリーレストランと、高級フレンチレストランでは、お客さんの数はファミリーレストランの方が多いですが、シェフの料理の腕は高級フレンチレストランの方が一般的に上であることからも、わかると思います。
インプラントの製品・メーカーにも当然一流から三流まであります。インプラント処置の成功率については、もしかすると製品の差によるものより、歯科医師の技術的な問題の方が大きいとは思います。但し、入れた後にメンテナンスするときに大きな差が出てしまいます。例えば、インプラントのパーツが破損したとなった場合、メジャーなメーカーなら、メーカーの特定からインプラントの品番まで割と簡単にわかります。そうすると、必要なパーツを発注し、フォローすることもできます。
しかし、マイナーなものになると、特定不可能の場合もあります。そうなると取れる選択肢が限られます。単純に撤去するのにも難易度が格段に上がることさえあります。
また、ノーベルバイオケアやストローマンなどのメジャーなメーカーなものの場合、オプションパーツも豊富にあるため、残っている歯の状況が変わってからのパーツ交換などもスムーズにいきますが、そうではないメーカーの場合だと、オプションパーツの選択肢自体がないため、手詰まり(最悪撤去)になったりします。
特に、かぶせものタイプから入れ歯タイプへの移行の時に、メジャーなメーカーは磁性アタッチメントやロケーターアタッチメントなど豊富な選択肢がありますが、そうでないメーカーはあってもOリングアタッチメント1種類のみだったり、そもそも義歯用のパーツへの移行が無理だったりします。
マイナーなメーカーは、製品の廃番や事業への撤退のリスクもあるため、出来るだけ避けることが大切です。
インプラントの料金のシステムを考えればわかるのですが、インプラントを入れるときは高額ですが、メンテナンスについてはあまり高額な治療費がかからないことが一般的です。そのため、自院で入れたインプラントのメンテナンスはするけれども、他院で入れたインプラントのメンテナンスは拒否するということがあります。メンテナンス中にトラプルがあった場合、責任の所在でもめたくないということもあるのでしょう。
残念な話ですが大学病院(私の出身校の大阪大学ではありません。)ですら、他院で入れたインプラントのメンテナンスについては受け入れ拒否してくる事例を体験しました。
海外で安くインプラントを入れられるという話も聞きますが、処置の責任の所在やメンテナンスの観点から、絶対にお勧め出来ません。インプラントは入れたらおしまいで一生持つという性質のものではないからです。また、海外のその国では一般に流通しているパーツでも、日本国内では手に入らないこともあり、メンテナンスという観点では最悪です。