過剰診療とは、医学的に必要ない治療を過剰に行ってしまうことです。
最近(2023年7月)、中古車販売業者による不正が報道され、問題となっています。 具体的には、例えば以下のようなことがあったようです。
- 必要ない自動車の修理をし、その費用を保険会社に請求する。
- 意図的に車を壊し(例えばタイヤをパンクさせる)、その工賃を請求する。
- 無資格者によって車検を行う。
上記のようなことが起こる原因として、過剰なノルマ(要するにお金の問題)の存在があり、助長する仕組みとして、車の中身はユーザーからは複雑すぎてわからないということがあります。
過剰診療と用語になってしまっているくらいなので、医療業界でも良くあることなのかもしれませ。もしかすると歯科業界でも起こりえることなのかもしれませんので、歯科業界でこのようなことがあれば、どのようなことになるか、考えていみます。
歯科業界で過剰診療や不正があるとするなら、その例
- 小さなむし歯で、コンポジットレジン充填などの歯を小さく削る治療法(利益が少ない)が適用の歯に対し、大きく歯を削るかぶせ物(利益が大きい)の治療を行う。
- 医学的に適切な治療をすれば残せる歯を抜歯し、利益率の高い高額なブリッジやインプラント処置へ誘導する。
- 行ったかどうか患者さんにわかりづらい処置を行ったことにし、費用を請求する。例えば、歯石取りや歯磨き指導など。
- 行っていない治療を行ったことにし、保険や公費で費用を請求する。例えば、歯を削ってすらいないのに、かぶせものを入れたことにするなど。(特に生活保護や医療証を持っていて、自己負担が0円または定額の場合。)
- 治療の必要ない健康な歯をむし歯だと偽って削って処置し、費用を請求する。
- 医学的・科学的な根拠のない処置を夢の治療かのように偽り、処置を行って費用を請求する。
- コスト的な問題により、医学的に必要な手順を省略する。具体的には、ラバーダムをしない根管治療など。
- 高額な材料を使ったことにして、実際は粗悪な材料を使用する。(金銀パラジウム合金→NiCo合金、硬質レジン歯→レジン歯、レジンセメント→グラスアイオノマーセメントなど)
- 歯科衛生士に精密な型取りをさせたり、レントゲンスイッチを押させたり、治療行為をさせる。
- 無資格者(歯科助手)に口の中を触らせる。具体的には、型取り・歯石取り・歯の清掃・レントゲンスイッチを押させるなど。
その背景には、国の医療費削減を盾にした理不尽な歯科健康保険による歯科治療費の抑制(過剰なノルマに相当)が関連するかもしれません。 治療単価が諸外国の5分の1~10分の1程度にくらいの水準で国から強制的に決定されています。医療機関に価格決定権はありません。「売り上げ=単価×数」であり、医療機関に価格決定権がない以上、売り上げを上げるには数を増やすしかありません。数を増やすには、1つの治療時間の短縮(診療のスピードアップまたは手抜き)か診療時間の延長のみです。また、絶対的な数が必要なので、上手に広告するか、過剰診療を行って、数を増やすことも必要です。
健康保険診療では、最初から薄利多売せざるを得ず、結果的に過剰診療をさせやすいシステムになっています。
回避の難易度が高い過剰診療の原因
例えば、薬剤の効果について、薬剤を販売する企業が利益を出したいがために、薬剤の研究データで不正をして、実際の効果を誇張した効果のデータをエビデンスとして出してしまうと、それを判別することが中々難しくなってしまいます。急性症状を抑える薬(例えば、痛み止めや抗菌薬)は割と実感しやすいですが、病気の予防や慢性疾患になると、効果の判定が個人では実感しづらいことが多く、医師・患者共に気が付きにくいです。