覆髄・断髄のデメリット
覆髄・断髄は、神経を残す処置で、成功すれば歯の寿命を伸ばすことが出来る良い治療法です。しかし、デメリットもあるため、その点を考慮しつつ、治療法を選択する必要があります。
神経の管が細くなってしまう。
神経を残す処置を行うと、残っている神経は当然生きています。神経が生きているときに外部から刺激を受けると、神経が象牙質(歯)を内側に作ります。神経が外の刺激からの防御のために歯を作って、神経自体が細くなります。このこと自体は良いことです。少し問題になるのは、神経が細くなるということは根管が細くなるということです。
しかし、この状態で例えば後でむし歯が再発するなどのことにより根管治療をしないといけないことになってしまうことも当然あります。通常は、根管治療可能ですが、ごくまれに、根管が細くなりすぎてしまい、器具が根管内に入らなくなってしまい、根管治療が困難になることもあります。低い確率なので、過度に警戒する必要はありませんが、一応、考えておかないといけないことではあります。
覆髄・断髄の処置が失敗したときの根管治療の成功率が少し下がる。
覆髄・断髄の成功率は100%ではありませんので、失敗したときのことも考えておかなければいけません。覆髄・断髄の処置が失敗するということは、神経が死んでしまうということです。この場合は、感染根管治療(初回治療)の治療を行う必要があります。神経が生きているうちに、神経を取る治療は抜髄ですが、抜髄と感染根管治療(初回治療)の成功率を比較すると、約90%と約80%(ラバーダムをした状態での精密根管治療で。)となるため、最初から抜髄をしておいた方がやや根管治療自体の成功率は下がってしまいます。成功率が大幅に下がるわけではないので、ローリスクハイリターンと考えられますが、リスクが全くないというわけではありません。
覆髄・断髄のリスクは、将来に対するリスク
覆髄・断髄は、将来もしかしたら起こるかもしれないというリスクが多く、処置自体に直接的に今すぐに絶対に何らかのデメリットがあるということではありません。そういう意味では、チャレンジしやすい処置ではないかと思います。