根管治療の治療にかかる回数は少ない方が良い。
1本の歯を根管治療するにあたり、治療開始時から根管充填・コアのセットをして根管治療を終わらせるまでの回数は、実は少なければ少ないほど良いです。その理由を説明していきます。
細菌感染の機会をなるべく減らすため
治療が始まって、コアをセットするまでは、上の部分を仮詰めでふさぐことになります。仮詰めを着脱するだけでも、細菌侵入のチャンスは増えてしまいます。また、回数がかさむということは、それに伴って治療期間も伸びてしまいます。治療期間が延びれば、仮詰めの期間が増え、仮詰めをどんなに強固なものにしてもやはりコアを入れてしまうよりは感染の確率は高くなってしまいます。細菌感染の機会を減らすには、回数は少なく、治療期間は短くしたほうが有利です。
そもそも、根管治療は歯の手術ですが、お腹の手術を何回にもわけてすることは普通ありません。口をあけっぱなしにして長時間(3~5時間など)処置を行うことが患者さんの負担になるため、便宜的に複数回にわけて処置することが多いだけです。
最近では、根管貼薬での消毒は必須ではないという研究がありますので、可能であれば、1回で処置を終わらせることがベストということになります。ラバーダムをした上で、マイクロスコープで確認し、これ以上きれいに出来ないというところまで処置をしたら、早く根管充填を行います。世界的には、これがスタンダードです。
当院では、抜髄や初回の感染根管治療で1~2回(1回90分程度の予約)で根管充填まで行います。感染根管の再治療の場合は、2~3回で根管充填まで行くことが多いです。
症状がひくまで様子を見て、症状がひいてから、根管充填をするということはありません。
細菌感染の状況と症状はリンクしません。処置の刺激で一時的に症状がひどくなることもあります。傷口に消毒薬を塗るとしみるのと同じです。また、処置後数か月して、治ってくる過程で一時的に症状がぶり返すこともあります。そもそも、処置をしなくても、自然と急性炎症から慢性炎症へ移って症状が和らぐことはあります。そして、根管治療という手術が終わって、しばらくしてからその効果が出てきて症状がひくということは普通にあります。そのため、症状が引くまで仮詰めにしておくということは合理的ではありません。お腹の手術をする際に、症状が引くまで仮縫いで様子を見るということがないのと同じです。
歯科の場合、保険診療のせいで標準的な治療が捻じ曲げられてしまっていますが、他の科の手術と同等と考えると、わかりやすいと思います。
根管治療においては、「何回も消毒してくれて丁寧だ」は間違い
世界標準的な治療では、何回も消毒するような根管治療はありません。痛みやはれなどの症状が引くまで消毒し続けるということもありません。根管治療で中を消毒する際に、消毒薬の刺激で症状がぶり返す可能性(軽度のものを合わせると50%程度です。フレアアップと言います。)があるため、症状を引かせてから根管充填をするという考え方が根本的に辻褄があわないからです。
根管治療において、何度にも分けて消毒することは、基本的に悪手であるし、ましてやラバーダムをせずに根管貼薬を繰り返すというのは、根管内に何回にも分けて長期間にわたり細菌を入れているだけで、何の治療にもなっていないということになってしまいます。