早めに抜いてインプラントは損
早めに歯を抜いてインプラント治療を受けることのデメリットを説明していきます。
歯を抜かずに残した方が良い理由
歯を治療しても、成功率が100%でない。それなら、歯を抜いて早めにインプラント、入れ歯やブリッジにしてしまった方がいいんじゃないか。当院で、度々、患者さんに質問されます。確かに、歯を治療して残すことに関して、100%成功するとは言えません。どんなに丁寧に正確に治療しても、医学というものは結果が出ないこともどうしてもあります。しかし、抜歯処置の成功率は基本的には100%(骨髄炎や敗血症なのどまれな合併症は除く)です。そう考えると、一理あるように思えます。
しかし、この理屈には論理的に大きな穴があります。早めに歯を抜いてインプラント治療を受けるのは、全くお勧めできません。
インプラント治療の成功率は100%ではありません。
抜歯処置の成功率は100%ですが、その後のインプラントの成功率は100%ではありません。日本でのインプラント周囲炎の発生率が3年後に30%程度と言われており、逆に言えば成功率は3年後に70%程度(インプラント周囲炎以外が原因の失敗がカウントされないため、実際はもっと低くなるはずです。)になると考えられます。そうなると、標準的な精密な感染根管治療(再治療)の成功率が5~10年後に70%程度なので、歯を残す根管治療の処置の方が成功率が高いということになってしまいます。成功率が低い処置を避けるために、さらに成功率が低い治療にチャレンジするという論理的に矛盾した状況に陥ってしまいます。
このため、よほど元の歯の状況が悪くなければ、歯を抜いてインプラント治療を行うことが逆効果になることは明らかです。
インプラント・入れ歯・ブリッジはあくまで偽の歯であり、天然の歯の機能にはかなわない。
歯の機能のうち、大事なものの一つとして、食べ物をかむことです。ものをかんだ時の力の負担は、歯の根っこと骨が接続している歯根膜という部分で受けています。歯を抜いてしまえば、当然、その歯ではかむ力を支えられなくなるため、他の歯の負担が増えてしまいます。インプラントは、骨に人工的なネジを埋め込むため、かむ力を支えられるように思われますが、歯根膜が存在せず、かんだ力の感触を感じる能力が低いため、本当に周囲の残っている歯の負担を減らすかどうかは不明です。
また、インプラントはインプラント周囲炎のリスク、入れ歯は違和感のリスク、ブリッジは隣の歯を削るリスクなど、天然の歯を残さなかったことによる生じるリスクが多数あります。
例え、歯が永久に残らなくても、延命にはとても意味があることです。
そもそも、歯科治療は溶けた歯や骨を復活させることは出来ないので、全て延命治療です。しかし、その延命に非常に意味があるため、歯を残すための治療を行います。歯を残すことで、インプラント・ブリッジ・入れ歯になる時期が少しでも遅くなります。インプラント・ブリッジ・入れ歯も劣化するし、永久には持ちません。歯を残すための延命治療をすることにより、その後のインプラント・ブリッジ・入れ歯の人工物による処置を遅らせることが出来、それらがトラブルを起こす時期を遅らせることが出来ます。人間には寿命がありますので、歯を抜いく時期を遅らせることは、人工物のトラブルにあう可能性を直接減らすことにつながります。