感染根管に至るまで
感染根管とは、神経が死んでしまっているのに放置して細菌感染してしまった場合と、抜髄(神経を取る治療)を行ったが根管内に細菌感染が起こってしまった場合に分けられます。前者に対する治療は、感染根管治療(初回治療)と呼ばれ、抜髄と治療の流れはほとんど同じです。後者は感染根管治療(再治療)と呼ばれ、多くの感染根管治療はこちらの再治療です。このページでは、感染根管治療(再治療)について説明していきます。
根管内への細菌感染
むし歯などが原因により、歯の神経を取らなければならない状態になったら、抜髄と呼ばれる処置をします。一般的に、抜髄をすると神経の組織を取って、根管内にガッタパーチャと呼ばれるゴムのような材料を根管内に充填します。
根管内は、神経の組織を取ってしまっているため、ご自身の組織(神経の組織・血管・血流・免疫細胞など)が全くなくなってただの筒のような状態になってしまいます。
この状態で、根管内に細菌が感染してしまうと、細菌を殺すことが出来ません。そのため、根管内に感染した細菌がどんどん根っこの先から骨の方に漏れ出してしまいます。
骨の中にはもちろん血管もあり、ご自身の免疫力が働きますが、何しろ大量に細菌が骨の中に送り込まれてきますので、免疫が負けてしまい、骨の中で病巣を作っていきます。
原因は、根管内に感染した細菌なので、これを取り除くことが感染根管治療です。
感染根管を作る原因
どういった原因により、感染根管を作ってしまうのかを説明していきます。 残念ながら、下記のように
医原性(処置の不手際)によって感染根管を作ってしまうことが多いです。日本の健康保険診療での抜髄の成功率は50%もないと言われており、世界標準的な治療の成功率90%より大幅に低く残念なことです。
抜髄時の清潔操作の不備(医原性)
抜髄を処置を行う際に、ラバーダムを使用して根管内への感染を防いだり、滅菌されていない細菌感染した器具で治療したり、不十分な仮詰め法を行うことで、治療によって感染根管となってしまうことがあります。
抜髄時の治療内容の不備(医原性)
抜髄時に、細い根管を見落として治療出来ていなかったり、器具の操作が不適切でむし歯や神経の除去が上手く出来ていない場合、治療により感染根管となってしまうことがあります。
かぶせものの不適合(医原性)
根管治療が適切に行われたとしても、その上の土台やかぶせもの(クラウン)の適合性が悪かったり、接着が上手くいっていないと、歯とかぶせもの・土台の隙間から根管内に細菌感染を起こしてしまいます。
抜髄処置の限界
細菌は目に見えないため、適切な抜髄処置を行ったとしても、いつの間にか根管内に感染が起こってしまうことがあります。適切に治療をした場合の抜髄の成功率はおよそ90%くらいなので、医学の限界により、感染根管となってしまうことがあります。
抜髄後にむし歯が再発した
抜髄後の処置自体が成功していたとしても、また新たにむし歯が根管まで達してしまった場合、そこから根管内に細菌感染を起こしてしまいます。