歯科医院ごとの成功率の数字は、あまり参考になりません。
当院への問い合わせで、「当院での治療の成功率」について尋ねられることがあります。、歯科治療の歯科医院ごとの成功率については、患者さんにとって、決定的なものにはなりません。そのため、当院では成功率を細かく計算していませんし、今後計算することもありません。その理由を以下に説明していきます。
論文化していない限り、公に認められません。
歯科医院が独自で調べた成功率のデータがあったとして、それは論文化していない限り、自分で勝手に言っているだけということになります。論文化するにしても、特殊な治療法でなければ、普通は論文化出来ません。第3者からのチェックもないので、そのデータの取り方に信憑性の担保は非常に少なくなってしまいます。極端にいえば、、全く調べていないのに調べたことにして、データがあることにするということも可能です。
実際に成功率を計算するとなると、非常に手間がかかる。
実際に成功率を正確に計算することは、非常に大変です。(診療をしていて、大雑把にどれくらいかということはなんとなくはわかりますが。)それなのに、上に書いたように信憑性の担保がないので、価値がなく、使い物になりません。労力をかけても何も得しないということになります。そのため、私だったら、歯科医院個別の成功率を計算したと言われても、本当かなぁと疑ってしまいます。
成功率なんて、自分でいくらでも操作出来てしまいます。
簡単に成功率と言ったところが、では、具体的にどうなれば成功と言えるのでしょうか。例えば、一定期間(1年・3年・5年・10年)症状なく経過すれば良いとするか。レントゲン上の病巣の影が消失したら成功とするか。症状があっても、歯を抜いていなければ成功とするか、まずは、成功の基準を適切に定める必要があります。また、最初の病気の状態で重症な歯をデータから除外(ダメもとでやってるから、カウント外等)すれば、成功率は上がります。成功率・生存率などの数値を見たとしても、その中身まで詳細に把握しなければ、結局は意味がない数字となってしまいます。
研究データでの成功率は説明出来ます。極力客観的な情報をお伝えいたします。
例えば、「現状からの治療の成功率は、論文ベースだと、大体80%くらいの成功率です。全体としては、高い成功率です。しかし、残念ながら、あなたが失敗のケースに入ってしまった場合、あなたにとっての成功率は0%です。」という風な説明が医学的には適切な説明だと思います。
また逆に、「現状からの治療の成功率は、論文ベースだと、と大体30%くらいの成功率です。全体的には高い成功率とは言えませんが、もし成功すれば歯を抜かずに済みます。歯を抜く前に最後のチャレンジをされるか、それとも低い成功率なので、諦めて歯を抜くか、どうされますか。」といった説明も、医学的には適切だと思います。
治療の成功率は、患者さん個人にとっては、非常に体感しづらいものです。当院では、論文上での治療の成功率を説明し、極力治療内容について理解していただいてから、治療を進めていく努力をしております。