歯の神経とその保存の重要性
歯の中には歯の神経(歯髄)と呼ばれる組織があります。歯の神経は、歯の痛みや温度などを感じるための感覚神経や血管や細胞などの組織から出来ています。歯の神経は、歯を守るための様々な防御機構(下記)を持っているとても大切な組織です。出来るだけ、歯の神経の組織を守ることが、歯の寿命を長くするために重要になってきます。
マイクロスコープ・MTAセメントなどの機器や材料の発達より、神経を残せる可能性が高まってきました。
※歯の神経がすでにやられてしまっている場合は、神経を残すことが難しいです。その場合は、速やかに根管治療することが歯の寿命を延ばします。
歯の神経の残すための治療
不幸にも、深いむし歯になってしまった場合、むし歯治療が必要です。歯の神経を残すためには、以下のような治療法が挙げられます。
ダイレクトボンディング
むし歯治療でなくなってしまった歯を補う処置として、最も健康な歯を削る量を少なくすることが出来るつめものの処置です。当院でも、大きなむし歯以外はこの治療法を強く推奨しています。
直接覆髄
神経まで達してしまっているむし歯でも、神経が生きている場合には生態親和性の良いMTAセメントと呼ばれる特殊な材料で神経の組織を保護して、残す治療です。
断髄
神経の組織が一部死んでしまっていても、生きている部分がある場合、死んでしまっている部分を取り除き、生きている部分を生態親和性の良いMTAセメントと呼ばれる特殊な材料で保護して残す治療法です。
クラウン(神経を取らずに入れる)
クラウン(かぶせもの)は、神経を取らないと入れられないと患者さんに説明する歯科医師もいますが、実際は、ケースにより神経を取らずに入れることも可能です。大きなむし歯でダイレクトボンディングなどのつめものの治療が難しい場合でも、神経を残せそうなら保存してクラウンを入れることで、歯の寿命を延ばすことが出来ます。
歯の神経の役割
歯の神経の役割については、下記のようなものが挙げられます。
痛みなどの感覚を感じること
例えば、むし歯や歯の外傷、極端な温度変化を感じることで、歯の負担になるような刺激を体に知らせる働きをします。
刺激への防御反応
歯への刺激があったときに、歯の神経の部分が内部に壁を作り、刺激が伝わりにくくするための防御をします。修復象牙質の生成や、歯の神経の石灰化と言われます。
骨への感染予防
歯の神経の組織は、多少の免疫力を持っています。歯の外部から、骨の中へ細菌感染を起こさないように防御してくれています。「歯髄(歯の神経)は天然で最高の根管充填剤」と歯科医師の間で言われることがありますが、根管治療するより、天然の歯の神経を残した方が良いという当たり前のようですが、人工物は天然のものに勝てないという基本に立ち戻った言葉だと思います。