入れ歯が痛い原因を診断するところから治療です。
入れ歯が痛くて、お食事するのが苦痛になってしまうことは、患者さんにとって非常にお辛いことだと思います。単純に、入れ歯の当たって痛いところを削れば治るというものではなく、痛みが出る原因をきっちり探り当てて解決しない限り、痛みはひきません。また、様々な原因が複合的に関係している場合もありますので、総合的に診断し、解決する必要があります。今回は、総入れ歯が痛い原因で患者さんの上限の問題(いわゆる歯科医師から見て難症例)の場合を説明したいと思います。
患者さん条件の問題(難症例)
- 吸着のための条件が悪い
- 歯ぐきが薄い
- 顎の関節が不安定
- 唾液の量が少ない
- 顎の骨にこぶがある
吸着のための条件が悪い
総入れ歯は、総入れ歯の内面とお口の中の粘膜の間に空気が入らないようにし、吸盤のような効果を出すことで引っ付いています。これを入れ歯の吸着と言いますが、吸着させやすいためのお口の中の条件があります。この条件を満たしていれば、入れ歯と歯ぐきの間に空気が入りづらく、満たしていなければふとした時に入れ歯と歯ぐきの間に空気が入り、入れ歯が外れてしまいやすいということです。入れ歯が外れやすいと、外れる際に入れ歯と歯ぐきがすれてお痛みが出やすいです。当院では、条件が悪くても出来るだけ吸着力を上げるための努力を行い、例え吸着力が少なくても、入れ歯が安定して機能するための入れ歯の設計を行っております。
歯ぐきが薄い
患者さんの歯ぐきの厚さが薄い場合、硬い骨と硬い入れ歯で薄い歯ぐきが挟まれて圧迫され、お痛みが出やすいことがあります。ほとんどの場合、適切な設計を行って調整をすれば、お痛みを解消することが出来ますが、数%の方はお痛みがましにはなってもなくなり切らない場合があります。その際は、コンフォートデンチャーと呼ばれる入れ歯の内面に柔らかいクッションになるような材料を使用するタイプの入れ歯により、お痛みを和らげる処置を行うことがあります。
顎の関節が不安定
顎の関節が健康であれば、素早くカチカチカチと噛んでもらう(タッピング運動)とき、上下のかみ合わせがぶれずに一定の位置でかむことが出来ます。何らかの事情により、顎の関節の骨がすり減っていたり、顎の関節自体が周りの組織と癒着していたりすると、タッピング運動をした時に一定の位置でかめずに前後左右にずれてしまうことがあります。また、二態咬合と言いますが、かみ合わせの位置がその時々によって前と後ろの2か所に変わってしまう癖をお持ちの場合があります。顎の関節の状態には色々ありますが、不安定になっているとかみ合わせの位置が一定せず、前で説明しましたかみ合わせのバランス不良を起こしやすい状態になってしまい、お痛みにつながりやすいです。
当院では、ゴシックアーチ検査により、事前に顎の関節の状態を検査してその結果を入れ歯に反映させます。適切な設計の入れ歯を製作し、顎の位置のずれに対応させるようなかみ合わせ調整を行い、治療用義歯で噛むためのリハビリを行っていくと多くの方で安定してきますが、やはり顎の関節が不安定だと治療は長引く傾向にあります。
唾液の量が少ない
唾液は、入れ歯の吸着や歯ぐきが入れ歯から伝わる噛んだ時の衝撃を受けるための潤滑液としてとても大事なものです。高血圧のお薬などを服用されていると、唾液の分泌量が少なくなってしまうことがあり、その場合は入れ歯の吸着力が落ちてしまったり、噛んだ時にお痛みが出やすくなってしまします。水分補給をこまめにしてもらったり、人工唾液を使用していただいたりします。
顎の骨にこぶがある
上あご、下あごの骨に骨のこぶ(骨隆起)があり、入れ歯と当たってお痛みが出る場合があります。この場合、入れ歯の内面をリリーフ(空かす)することでお痛みを解消できる場合もありますが、難しい場合は骨隆起除去の簡単な手術を行う場合があります。