入れ歯が痛い原因を診断するところから治療です。
入れ歯が痛くて、お食事するのが苦痛になってしまうことは、患者さんにとって非常にお辛いことだと思います。単純に、入れ歯の当たって痛いところを削れば治るというものではなく、痛みが出る原因をきっちり探り当てて解決しない限り、痛みはひきません。また、様々な原因が複合的に関係している場合もありますので、総合的に診断し、解決する必要があります。今回は、総入れ歯が痛い原因で入れ歯が原因の場合を説明したいと思います。
入れ歯の問題
かみ合わせのバランス不良
総入れ歯の場合、歯がありませんので、かみ合わせは、上下の入れ歯の歯のかみ合う接触点で決まります。上下の歯のかみ合わせが、前後左右均等に当たって噛む力を全体的に分散させる必要があります。例えば、右の奥のところだけ強く歯が当たるような状態になっていると、噛むごとにその部分にばかり強い力が加わり、歯ぐきが痛くなってしまうということです。
また、下あごは顎の関節を支点に色んな方向に動きます。かみ合わるとき、垂直の力だけでなく、横揺れの力(いわゆる歯ぎしり)もかかってきます。下あごが横揺れした時にも出来るだけ均等に歯が接触するように入れ歯の設計・調整を行う必要があります。専門的には、両側性平衡咬合と言いますが、このかみ合わせ調整をしっかり行えることが歯科医師・歯科技工士の腕の見せ所であります。
上下かみ合わせは、顎の関節によって安定しますが、患者さんによっては顎の関節が緩んでしまっていたり、逆に癒着してしまっていたり、また顎関節症など問題を抱えている場合もあります。特に、合っていない入れ歯を無理に使われて、顎の関節にダメージになってしまっていることがあります。その場合、カチカチする動作が一定せずに前後左右にぶれてしまったり、歯の噛む面の接触時の入射角が斜めになってしまったり、力学的に不利な状況になってしまっていることがあります。まず、こういった状況を確認することが出来るのはゴシックアーチ検査と呼ばれるしかなく、このゴシックアーチ検査を行える歯科医院・歯科技工所が日本でほとんどないことが大きな問題です。
そして、検査により分析した結果より、顎の関節の動きにあわせて人工の歯の噛む面の形態をカスタマイズする必要があります。例えば、カチカチ運動のときに左右に1㎜くらいぶれが出てしまう場合、ぶれの範囲内でどこで噛んだとしても左右均等にかみ合わせられるような調整が必要になります。
解決策としては、顎の状態をしっかりと検査し、顎の動きに合わせた均等なかみ合わせをきっちり設計して作っていくことです。当院では、ゴシックアーチ検査を年間50回以上(恐らく日本トップクラスの数です。)行っており、上記のような症例も多く診ておりますので、安心してお任せ下さい。
入れ歯の吸着・安定不良とは、簡単に言えば外れる入れ歯は痛みが出やすいということです。お口を開けて外れた入れ歯が、再度噛んだ時に歯ぐきに強い力で打ち付けられます。そんなことが何度も起これば、当然痛くなります。お食事中だと、入れ歯と歯ぐきの間に食べ物が挟まってより痛みが増えるでしょう。また、かみ合わせの左右のバランスが悪いことで、入れ歯が横滑りし、擦り傷を作ってしまうことがあります。
総入れ歯の吸着・安定は、それを実現するための総入れ歯の設計を行うことが大前提です。総入れ歯の吸着・安定の仕組みを理解しつくした歯科医師・歯科技工士でないと解決は難しいです。当院では、吸着義歯治療を専門的に行っておりますので、安心してお任せ下さい。
入れ歯と歯ぐきの適合不良
入れ歯の内側と歯ぐきの形があっておらず、強く当たる部分があれば当然その部分が歯ぐきに当たれば痛みが出ます。入れ歯は硬い石膏模型上で製作するのに、柔らかい歯ぐきの上に乗せるため、どうしても不適合な部分が出てしまいます。精密に作られた入れ歯でも、最初靴ずれのように痛いことがあるのはこの適合不良がどうしても多少出てしまうためです。ただし、適合不良に関しては、強く当たっている部分を削ればすぐに解決しますので、大した問題ではありません。
ただし、合っていない入れ歯のほとんどは前に説明した「かみ合わせのバランス不良」や「入れ歯の吸着・安定不良」といった設計不良による大きなトラブルを抱えています。
当院の初診の患者さんが良く言われる「前の先生に入れ歯の当たっている部分を削ってもらっても痛みが取れない。」のは、設計の不備があるので設計を変更(検査しなおして作り直し)しないといけないのに、見当違いな「入れ歯と歯ぐきの適合不良の調整」を行っているためです。