もしかすると、お口の中の金属が皮膚症状の原因かもしれません。
かゆみ・かぶれ・肌荒れなど、皮膚科に通っても治らないとお困りの方、もしかするとお口の中の金属が原因かもしれません。
従来より、日本の歯科治療では金属が沢山使用されてきました。つめものやかぶせ物、入れ歯の針金、場合によってはセメント(歯科用接着材)にも金属が含まれています。その金属に対するアレルギーで、アトピー性皮膚炎・掌蹠膿疱症・扁平苔癬といった皮膚の疾患が引き起こされていることがあります。原因不明だった症状の原因が、実は歯科金属によるものだったということがあります。
一度金属アレルギーになると、完全に治るすることはありません。アレルギーとなる金属との接触を避けて症状が悪化しにくくすることが治療になります。
最近は金属以外の材料にも高性能なものが出てきており、アレルギーの原因となっている金属をアレルギーの出にくい素材に置き換える金属除去療法を行うことが出来るようになってきています。
保険適用金属(金銀パラジウム合金・ニッケルクロム合金)の人体への害
健康保険適用で当たり前に用いられている金銀パラジウム合金・ニッケルクロム合金の生体への害は以下のようなことがわかってきています。
- 口の中で腐食します。腐食するということは、口の中で解けて金属を体内に取り込んでいるということです。
- 非常に多くの金属元素を含んだ合金です。腐食するため、体内に非常に多くの金属元素を取り込み、さらに排出されず体内に蓄積されていく可能性があります。
- 体内に取り込まれた金属は金属アレルギー(口内炎・扁平苔癬・アトピー性皮膚炎・掌蹠膿疱症など)を引き起こすことがあります。
- 腐食するため、つめもの・かぶせものと歯との間に隙間ができます。そこから2次的にむし歯になりやすいです。
- 溶け出した金属が歯ぐきに沈着し、歯ぐきが黒ずむことがあります。(メタルタトゥー)一度着色してしまうと取り除くのは難しいです。
- ニッケルクロム合金に含まれるニッケルには発がん性があるということがわかっています。
保険適用の金属なのに体に悪い?
国が健康保険で使えるように認めた金属なのに、体に悪いなんておかしいと思われるかもしれません。例えば、金銀パラジウム合金は1961年に保険適用になりましたが、当時の貧しい経済事情の中で安全だけれども高価な金合金が使用できず、体に良くないことは承知の上でやむを得ず認可されたいきさつがあります。(代用合金)
健康保険での治療は、ベストな治療というわけではありません。
皮膚科で原因金属を診断していただきます。(パッチテスト)
原因金属の除去療法といっても、
お口の中の全ての金属を取り除くのは、金銭的にも体力的にも負担になります。
当院では、提携皮膚科でのパッチテストと呼ばれる検査により原因金属を特定した上で、お口の中のつめもの・かぶせなどを除去し、アレルギーの出にくい素材のものに置き換える治療を行っております。
パッチテストとは?
左図のように、皮膚(背中など)に金属イオンを含ませたテスターを貼り付けた状態で数日間過ごしていただき皮膚の反応を見ることで、アレルギーの原因となる金属元素の特定を行う検査です。(健康保険適用)
適切な医療機関を紹介します。
アトピー性皮膚炎・掌蹠膿疱症・扁平苔癬等の疾患はあくまで皮膚科の疾患であり、歯科医師免許で診断や検査(パッチテスト)を行うことは違法です。当院でパッチテストを行うことはできませんので、金属アレルギーに詳しい適切な医療機関を紹介させていただきます。
金属除去時に、削りカスがお口の中で飛び散りにくいようにします。
金属除去療法と言っても、単に取ればいいというわけではありません。
金属のつめもの・かぶせものを除去する際、大量の削りカスが発生します。不適切な除去により、金属の削りカスがお口の中で飛び散ると、症状を悪化させる危険性があります。
当院では、除去の際にラバーダムといったゴムのシートを装着したり、その他、粘膜を保護する処置を行うことで、削りカスによる二次被害を抑えます。
一般的なラバーダムシートの素材のラテックスゴムに対するアレルギーをお持ちの方に対しては、ラテックスフリーのシートもご用意しておりますので、ご安心ください。
安全な金属除去。空気中に舞った削りカスも吸引します。
ラバーダムに加えて、口腔外バキュームという機械を使うことにより、空気中に舞った金属の削りカスを吸引し、鼻から体内へ金属の削りカスが入り込んでしまう量を減らします。可能な限り、体内への金属の取り込みを減らすように努力しております。
金属を使わないメタルフリー治療について。
金属を除去した後、新たに金属を使わないつめもの・かぶせものを入れる必要があります。患者さんの体に合わせた材料により、適切なつめもの・かぶせものを提供いたします。
金属アレルギー治療で大切なのは、むし歯や歯周病から症状が出ているわけではないので、金属を除去して処置する際により、健康な歯を極力削らず、元の状況から悪化させないようにしないようにすることです。金属がなくなっても、歯が悪くなっては意味がありません。
金属アレルギーにならないようにするためには。
そもそも金属アレルギーにならないようにするためには、金属に接触する頻度を下げることが大切です。最初から、お口の中に金属を入れない治療を行えば、金属アレルギーになる可能性が低くなります。日常生活の上で金属に触れてしまうのは仕方ない部分がありますが、歯科治療においては、金属を使用しなくても治療できるケースが増えてきています。
日本では「メタルフリーの材料=白い=ぜいたく品」とみなされてしまっており、メタルフリー材料が中々保険適用になりません。欧米では「金属を使う=毒を口に入れる」というくらいの意識で可能な限り金属を使わない歯科治療が進んでいますが、日本の歯科保険診療の制限により治療内容が遅れてしまっているというのが現実です。
さらに、そもそもむし歯治療が必要にならない状況を目指すことが第一ではないでしょうか。常日頃から、お口のケアを行い、予防に取り組むことで、自然と健康な状態が維持できると考えております。